歴史(西洋史)のレポート
歴史系科目のレポートの進め方を一言で言うと、「史実の説明→考察を加える」となります。
レポートの一般的な書き方は、「テキスト理解→考察」の手順なので、それを歴史科目に当てはめただけですね。
ただ1つ特徴的なのは、「考察」の加え方です。
史実から考察を加えるとはどういうことかと言うと、歴史的事実を説明して、その事実から何が言えるかをまとめるということです。
今回は、「歴史(西洋史)」のレポートを使って、説明と考察の書き方について説明していきます。
レポートの課題を見てみましょう。※著作権の関係上、課題の文章は変えてあります。
「印紙法」に対する抵抗運動を発端として、合衆国憲法成立に至るまでのアメリカ革命の経過を概観し、この革命の歴史的意義について説明してください。
総合教育科目なだけあって、レポート課題が親切です。どういうことかと言うと、レポート課題に従って進めるだけで、レポートの流れが完成するからです。
(総合教育科目のレポートの書き方については、こちらのページをご覧になってください)
アメリカ革命の経過を説明する
革命の歴史的意義を考察する
このようになるのですが、これらは上述した史実と考察に該当します。
さて、レポートの大まかな流れが決まりましたので、次に考えることは細かいステップです。
説明するときはキーワードを書き出す
レポートの流れを細分化する際に登場するのが「節」です。
レポートは「説明→考察」という要素からなるので、説明の節と考察の節が必要になります。(節の作り方はこちらのページをご覧ください)
その際気を付けることは、説明の節の数になります。基本的に複数の節に渡るので、予め説明すべきキーワードを用意します。
まずはキーワードを書き出してみましょう。
今回のレポートのキーワード
革命の背景=印紙法への反発
革命の発端=茶法と大陸会議
革命の重要な事件=『コモンセンス』とアメリカ独立宣言
憲法に関する事件=合衆国憲法成立までの紆余曲折
このようにキーワードを明確にすることで、過不足なく史実を説明することができます。なぜこのようなことをするかと言うと、「説明」においてよくある失敗例は、情報漏れが大多数だからです。
例えば、アメリカ革命の説明はよく書けているのに、憲法の説明を適当に済ましてしまうことです。このような情報漏れがあると、それ以外の場所が完璧に書けていたとしても再提出になりますので、説明の際には気を付けてください。
さて、キーワードが明確になったら、次に節立てをします。キーワードと対応させて節立てをすることがお勧めです。
第一節:アメリカ革命の背景
第二節:アメリカ革命の流れ
第三節:合衆国憲法成立までの歩み
第四節:アメリカ革命の歴史的意義の考察
説明のポイントは掘り下げ方
それでは実際のレポートで、説明の書き方を見ていきましょう。
上述したようにレポートは「説明→考察」という2つの要素を持ちます。
したがって、事実の説明は、考察の材料という事ができます。そのためには、事実の特徴をなるべく色濃く打ち出しておくことが大切です
今回は第三節に注目し、考察に繋げられる説明の書き方をお見せしたいと思います。
第三節:合衆国大統領成立までの歩み
アメリカ合衆国は独立したものの、13の独立州のゆるい連合体にすぎず、中央政府である連合議会の権限が弱かったこともあって、政治的・経済的困難が続いた。
そこで、強力な中央政府を樹立する気運が高まり、1787年にフィラデルフィアの憲法制定会議で合衆国憲法が作られた。
まずは背景から入ります。
その後で、次のように少しずつ掘り下げていきます。
憲法制定までには、いくつもの困難が待ち受けていた。合衆国憲法を支持する連邦派と、これに批判的な反連邦派が対立した。連邦派と反連邦派には、イギリスのような中央集権支持者と、それに反対する州権擁護者などが混在しており、広く意見を出し合った。
また農業を中心とする北部の対立や、大きな群と小さな邦との対立なども絡むなど、様々な対立が見られたのである。しかしアメリカ合衆国は、これらの対立を乗り越えるのに十分なギブ・アンド・テイクないしは妥協の精神を持ち合わせており、会議の雰囲気は終始紳士的であり、道理をわきまえていた。
「経過」を詳しく述べ、上述の背景を補足することが大切です。
次に問題の憲法の特徴です。なるべく多くの項目があると、その後の考察の助けになります。
この憲法は、共和制民主主義を土台としていて、中央政府の権限を従来よりも強化する連邦主義を採択している。また行政権は大統領率いる政府が行使し、立法権は各州から代表が集まる下院が行使し、司法権は最高裁判所が行使することも決めた。
これにより、互いに抑制しあう事によって、権力が一つに集中することを避ける三権分立の原則を定めた。
このように多角的に述べることで、合衆国憲法の意義、ひいてはアメリカ革命の歴史的意義が浮かび上がりす。
考察の書き方
続いては、考察の書き方です。
(考察とは何かについては、こちらのページをご覧になってください。)
それでは、第四節をお見せしながら、解説していきます。
第四節:アメリカ革命の歴史的意義
アメリカ革命がおこった時代、植民地は本国に対して隷属関係にあり、それを覆すという事は経済的・政治的事情によりほとんど不可能とされていた。そのような状況の中、独立を成功させたこの革命の意義は、世界の独立運動の啓示となった点だと考えられる。
また憲法において、世界初の導入である「成文憲法」、「三権分立」などを制定した点についても、後の民主政治に与えた影響は大きいと思われる。
考察とは事実から何が言えるかです。
史実を積み上げていった結果、あなたが感じた所感(感想)があると思います。それを分析的に述べれば、考察として認められます。
考察を加える際に気を付けることは、「分析的である」ということです。一番考えやすいのは、「後に与えた影響」でしょう。前後の繋がりを推測することで、その史実の全体的な位置づけを示すことができます。
反対に、考察と認められないのは、主観を述べただけの文です。レポートは感想文ではないので、完全なる主観は避けるようにしましょう。
例えば、「この革命を学習して〜が印象的であった。」などと書いてしまうと、「だから何?」と言われてしまいます。
つまり、客観性が大事だという事です。最後の文を見てほしいのですが、「〜と思われる」という言葉を使っています。
「〜と思う」は主観ですが、「〜と思われる」には、「だれでも自然とそう思える(状況である)」という意味があります。ですから、「根拠+〜と思われる」で締めくくることで、客観性を保持することができます。
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