「国語学」レポートで学ぶ、文学鑑賞の仕方

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文学作品を科学として扱う

語学系レポートでは、「鑑賞」という独特な考察を行います。文学作品自体は科学ではありませんが、科学である語学として扱うことができます。

 

そこで、文学作品を語学として鑑賞する方法を説明します。

 

著作権の関係上、レポート課題は掲載できないので、「日本人の言語生活について」というテーマになります。

 

まずは、このテーマを細分化して、食事に関する諺や職業に関する諺など、内容別に節を作ります。そのなかで「引用→考察」を繰り返し行い、言語生活と暮らしの結び付きを考察しましょう。

 

それでは、実際のレポートを用いて、諺の鑑賞をお見せします。

箸は一本、筆は二本

ことわざは『暮らしの中のとわざ』(p80)より引用した。それによると「当時は作家というものは貧乏暮らしで、今とはまるで違う時代であった。」とある。自らの生計を筆一本で立てねばならない作家、また箸はその生計を指していると考えられる。このことわざは、筆が一本立ちができないように、生活苦であるという作家の嘆きから生まれたと言える。たとえ作品が滞っても「食」は不変につきまとうので、当時の作家の厳しい現実と背中合わせにある彼らの「職」への情熱も感じられる。「職」と「食」、夢と現実の板挟みあった彼らの苦悩は絶えないと考えられる。

 

この諺の考察には、一本立ちできない筆と二本で立つ筆を想像することから始まります。筆は作家の商売道具なので、「職」を意味します。箸は食事の道具なので、「食」を意味します。

 

このような「筆=職・箸=食」という構図を理解できると、諺は作家の収入と家計の比較だと分かります。

 

つまり、行き先が常に不安定な作家業は、まさに一本足で立つようなものであるのに対して、食事は今月も来月も不変に付きまといます。そういう意味で、箸は二本足で自立しているわけです。

 

このようなわけで、この諺は作家の生活苦を表しています。

 

このとき、単に「生活が厳しい」と表現するより、どこか趣を感じることができます。それは、筆と筆を擬人的に想像することがもたらす作用であり、作家の狙いでもあります。実際に、作家が箸のように「自立」しようと頑張る姿を想像することができます。

憎まれっ子、世にはばかる

ことわざは『暮らしの中のことわざ』(p13)から引用した。このことわざを挙げることで、日本人の言葉への価値観を考察したい。挙げたことわざは憎々しい人に限って長生きするというもので、実に図々しい様を描き出している。ところで、「はばかる」という語に注目して、辞書で引いてみると「対象を敬遠する気持ちがあって、距離を置く」(『日本国語大辞典8』(p1113)より引用)とある。憎まれっ子が世間に遠慮して距離を置くなど、一般に解釈される意味と程遠いので、言葉の動揺が起こっているのではないだろうか。『暮らしの中のことわざ』(p14)によると、本来「憎まれっ子、世にはだかる」だったという説があります。「はだかる」は「いばる、大きな態度をとる」(『日本国語大辞典』(p977)より引用)という意味である。「憎まれっ子」に続く言葉としては、「はだかる」の方がしっくりくるのだが、広く使われていくうちにしだいに言葉が変化してしまったと考えられる。これは耳で聞こえた通りに発音してきた証拠でもある。文法的に誤った語が世の中に氾濫しても、これを受け入れ使用する。「相手に伝われば良い」という言語生活における価値観を見ることができる。

 

この諺は、「嫌われ者に限って長生きする」という意味で使われています。ただ、そうであると、「はばかる」という言葉が長生きするという意味になってしまい、少し違和感を感じます。

 

そこで、この部分に焦点を当てて考察できます。

 

文献によると、もともとは「憎まれっ子、世にはだかる」だったという説があります。「はだかる」とは、「いばる、大きな態度をとる」という意味なので、現在の意味とほとんど一致します。

 

そこで、なぜ言葉が変化したか調べ、当レポートのテーマである「くらしと言語の関係」に落としこみます。

 

文献によると、「はだかる」という言葉を聞こえた通りに発音するうちに、「はばかる」へ変化し、間違って広まったとあります。これには、聞いた通りに言葉を使うという日本人の習慣が関係しているのです。

 

実際に、現代の日本人も言葉を意味をよく調べず、二ュアンスで使うことはあります。このような日本人の言語生活に着目し、考察を加えることができるのです。

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