サスペンスドラマ

論理学 量化理論

真理関数理論の限界

量化理論は、真理関数理論の不完全さを補うべく拡張した推論です。
まず真理関数理論の不完全さとは何かを説明します。

 

 

前提@:男はみな数学を好む

 

前提A:私は男である

 

結論:私は数学を好む

 

 

推論式(前提の連言と結論を条件法する)は、p∧q→rとなり、真理値分析をしてみます。

 

p∧q p∧q→r

 

上から2つ目が偽となっていることに気付きます。
特定の場合に、前提から結論を引き出せないことになり、正しい推論ということはできません。

 

 

しかし、直観的にはやはり正しい推論です。
そこで頭のなかの直観そのものを分析してみると、推論の構造は、

 

「男」=「数学を好む」

 

「私」=「男」

 

∴「私」=「数学が好き」

 

より詳しく言うと、
「すべての男は数学が好き」なので、「すべての男から任意に選んだ私は当然数学が好きなはずある」という構造になっています。したがって、この推論では「すべての」「任意の」という量の要素が重要であることが分かります。

 

しかし文に記号をあてる方法では、この数量関係を表すことができません。
そこで新しい理論の必要性が出てきます。

 

それが量化理論です。

述語理論と呼ばれる理由

量化理論のポイントは次の2つです。

 

@主語と述語の記号化

 

A量化子に関する推論規則

 

量化理論は、真理関数理論の反省を活かし、文にそのまま記号をあてることはしません。
複数の前提文の共通要素を表現するために、主語と述語に別々の記号をあてます。

 

「私は男である」という文では、「私は」が主語で「男である」が述語です。
主語にa、述語にFという記号をあてると、この文はF(a)と表せます。

 

「男はみな数学を好む」では、「男は」が主語、「数学を好む」が述語です。
主語にx、述語にGという記号をあてると、この文はG(x)と表せます。

 

しかし「みな」という言葉を表現できていないことに気付きます。

 

そこで、量を表す記号である量化子を導入します。

 

「男はみな数学が好きである」という文は言い換えれば、
「どんなものxに対しても、xが男であるならば、xは数学が好きである」となります。

 

つまり、「どんなものxに対しても、F(x)→G(x)」と表現できます。

 

「どんなものxに対しても」には「ALL」の「A」を反対向きにした記号「∀」を用いて、「∀x」と表現します。

 

したがって、最終的に「∀x(F(x)→G(x))」となります。

 

結論「私は、数学を好む」という文は、主語と述語が既に記号化されているので、「G(a)」となることが分かります。

 

 

したがって、この推論の記号化は

 

前提@:∀x(F(x)→G(x))

 

前提A:F(a)

 

結論:G(a)

 

このようになります。

 

なお今回出てきませんでしたが、「ある」「任意の」を表す量化子は「ヨ」です。

量化理論の推論規則

次に前提から結論を導くための推論規則について説明します。
新たに4つの推論規則を導入しますが、すべて私たちが日常的に行っていることに過ぎません。
丸暗記するのではなく、考え方を理解して覚えていきましょう。

 

@普遍汎化(UG)

 

カテゴリーに属す1つがもつ特徴は、ほかのすべてのものも共通して持っていると考えるルールです。
任意に選んだものは同種のものを代表しているためです。

 

例えば、任意に選んだ三角形の内角の和を調べ、それが180°だったとします。
このときほかの三角形の内角の和も同じで180°ではないだろうかと考えるのは自然です。
またそれを確かめるためにすべての三角形をチェックすることもできません。

 

「任意性→すべて」なので、「∀」を付けると覚えておいてください。

 

 

A存在例化(EI)

 

存在しているものには名前を付けてよいというルールです。
なぜ名前を付けなければいけないかと言うと、名前を付けないことには表記ができないからです。
実際に「先ほどの点が〜」というより「点Aが〜」とした方が分かりやすいですよね。

 

これは数学の証明で頻繁に行われることであり、
例えば「点Aから線分BCにひいた垂線の足をHとする」という考え方が存在例化に当てはまります。

 

「存在保証→命名」なので、「ヨ」を取ると覚えておいてください。

 

 

B普遍例化(UI)

 

これが1番理解しやすい推論規則だと思います。
すべてのものに当てはまることは、そのカテゴリー内の特定のものに当てはまります。

 

例えば、「男はみな数学を好む」という前提が仮に正しいとき、
そこら辺を歩いている男を捕まえてきて、その人が数学を好むか考えてみましょう。
その人が男である限り、当然数学を好みます。

 

「すべて→特定」なので、「∀」を取ると覚えておいてください。

 

 

C存在汎化(EG)

 

これも考えてみれば理解できる推論規則です。

 

「三角形の内角の和が180°である」ということは、「三角形の内角の和は一定である」といっても決して間違いではありません。
具体的に言えることは抽象的にも言えるからです。

 

私のメルマガで「100人の方がレポートをまったく勉強しないですが・・・」と書いたら、皆さんは「何もそこまで具体的に言わなくても・・・」と感じることと思います。この場合「レポートをまったく勉強しない方がいますが・・・」と書いた方が適切な表現になります。

 

存在汎化とは、無意味に強調されている部分を敢えてボカし、「存在している」ことだけを表現するものです。

 

「特定→存在」なので、「ヨ」を付けると覚えておいてください。

演繹と正しい推論

前提  すべての馬は動物である

 

結論  馬の頭はすべて動物の頭である

 

まず前提を次のように言い換えます。

 

「どんなものxに対しても、xが馬ならば、xは動物である」

 

このように意訳することで、主語述語の記号化がとてもやりやすくなります。
「xは馬である」をF(x)、「xは動物である」をG(x)とすると、∀x(F(x)→G(x))となることが分かります。

 

結論は、「どんなものxに対しても、xが馬の頭ならば、xは動物の頭である」となり、

 

少し言い換えて、「どんなものxに対しても、xを頭とする馬がいるならば、xを頭とする動物がいる」とします。

 

この文を「xはyの頭である」をH(x,y)を使って記号化すると、∀x(ヨyF(y)∧H(x,y))→ヨy(G(y)∧H(x,y)))となります。

 

それでは、前提から推論規則を用いて結論を導きます。

 

1 ∀x(F(x)→G(x))   

 

すべての馬は動物である(前提)

 

 

2 ヨy(F(y)∧H(u,y))   

 

任意の馬の頭を選び、uという名を付ける(自分で追加した前提)

 

 

3 F(v)∧H(u,v)  

 

その馬をvと名付ける(2をEI)

 

 

4 F(v)→G(v)     

 

vは動物なはずである(1をUI)

 

 

5 G(v)∧H(u,v)     

 

vは動物で、uはvの頭である(3と4より)

 

 

6 ヨy(G(y)∧H(u,y))

 

・・・というものがいる(5をEG)

 

 

7 ヨy(F(y)∧H(u,y))→ヨy(G(y)∧H(u,y))  

 

uが馬の頭ならば、uは動物の頭である(2と6より)

 

 

8 ∀x(ヨyF(y)∧H(x,y))→ヨy(G(y)∧H(x,y)))  

 

任意の馬の頭に言えることは、すべての馬の頭に対しても言える(7をUG)

 

 

このように推論規則を用いて前提から結論を導く推論を演繹と呼びます。量化理論では演繹できるかどうかが推論の正しさを規定するのです。

 

 

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